scene4
 朝、というものは本来とても平穏に始まるのだ。
 ここ数日ほんの少しばかり気苦労の多かった彼女にも、優しい朝は等しく訪れる。
 はずだった。
 目覚め、新しい同居人を起こしてやろうと横を見たとき、彼女は驚いた。


scene4.1
「赤坂、アンタいつの間に!!」
「昨日ノ夜」
「どこ行ってたの」
「ヨクワカラン」
「わか……! ……もぉ……心配したじゃんかよ」
「……腹減ッタ」
「アンタはそんなコトしか考えてねーのかよ早々よゥ」


scene4.2
「で、シロは?」


scene4.3
「――どうしたの、その痣?」


scene4.4
「……これは」
「オレサマガブン殴ッタ」
「何してんの!?」
「あの、一ツ橋サン、赤坂サンは、その……」
「あーいいよォ。どうせコイツがわりーってことはわかりきってるンだし」
「違うんデス、僕……ホラ、赤坂サンが帰ってきましたカラ、僕」


scene4.5
「帰ろうと……」
 ――あの部屋に。
 あの、静かな静かな部屋に。
 陽の光も花も水も風もない、あの部屋に。
「か、えり……」


scene4.6
「インジャネーノ別ニ。イレバ?」


scene4.7
「シロ、赤坂と違ってよく働くもんネ」
「オレサマヲ引キ合イニ出スナ」
「なら働けよもうちょっと」
「働イテルダロ!?」
「うるせーいきなりいなくなりやがって。バカ坂め」
「ナンダテメーサッキカラセッカク帰ッテキタノニヨ!」
「うるさいバーカバーカバーカ坂!」


scene4.8
「……あ、の!」
「僕、いても……」
「いても、いいんデスか?」


scene4.9
「え? うん、もちろん」


last scene
 新しい朝が、来た。


end.




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